賞与の決め方|評価結果をどう反映するか

賃金・賞与

賞与の決め方|評価結果をどう反映するか

賞与の時期になると、「今回はいくら出すか」を、社長が最後に鉛筆をなめて決めている——という会社は少なくありません。業績が良かった年はなんとなく多めに、悪かった年はなんとなく少なめに、という調整はできても、なぜAさんがBさんより多いのかを説明できる基準がなければ、賞与は毎回「結果に対する納得感のない一時金」で終わってしまいます。本記事では、賞与を評価結果に連動させる仕組みをどう作るか、決算賞与との違いから手順に分けて整理します。制度全体の位置づけは人事評価制度とは|中小企業のための完全ガイドを参照してください。

賞与の位置づけを整理する:決算賞与と評価連動賞与

賞与には、性質の異なる2つの型があります。ひとつは、決算後の利益に応じて臨時的に支給する「決算賞与」。もうひとつは、あらかじめ決めた算定期間の評価結果を反映して支給する「評価連動賞与」です。

決算賞与は、法人税の節税効果や社員へのねぎらいを目的に、業績が良かった年だけ支給するものです。支給額は会社の裁量が大きく、恒常的な制度として設計する性質のものではありません。

一方、評価連動賞与は、夏季・冬季など決まった時期に、決まった算定式で支給する「制度としての賞与」です。本記事で扱うのはこちらで、決算賞与のような臨時的な仕組みとは切り分けて考える必要があります。両者を混同すると、「今年は業績が良かったから多めに」という決算賞与的な判断と、「評価が高かったから多めに」という評価連動的な判断が同じ財源の中でせめぎ合い、結局どちらの基準でもない中途半端な金額になりがちです。

なお、賞与などの臨時の賃金等について支給する定めをする場合は、労働基準法第89条第4号により、その決定・計算・支払方法を就業規則(または賃金規程)に記載する必要があります(相対的必要記載事項)。制度化する以上、口頭の慣行のままにせず、文書に落とし込むことが前提になります。

なぜ評価結果を賞与に反映させるのか

評価結果を賞与に反映させる理由は、月例給与だけでは反映しきれない「その期の頑張り」を、短いサイクルで報いられることにあります。

月例給与は、等級・役割という比較的長いスパンの評価に基づいて決まる金額です。これを頻繁に動かすと、社員の生活設計にも影響が大きく、下げにくいという性質もあります。一方賞与は、算定期間ごとに金額が変動する前提の支給であるため、その期の成果や貢献度を反映させても、社員の生活基盤を揺るがしにくいという特徴があります。

つまり、月例給与は「積み上げてきた実力への対価」、賞与は「その期の成果への対価」と役割を分けて設計すると、評価制度全体の説明力が高まります。等級・評価・給与、それぞれ何のためにあるかで解説した3要素の連動のうち、賞与は「評価」と「給与」をもっとも直接的に結びつける接点にあたります。

手順①:賞与原資をどう決めるか

賞与を評価に連動させる前に、まず会社全体でいくら賞与に充てるか、という「原資」を決める必要があります。原資の決め方には、主に2つの考え方があります。

原資の決め方内容向いている会社
業績連動型営業利益や粗利益の一定割合を賞与原資に充てる業績の波が大きく、賞与で調整したい会社
固定月数型基本給の◯か月分、と固定の目安を決めておく業績が比較的安定しており、予見可能性を重視する会社

中小企業の場合、業績連動型と固定月数型を組み合わせ、「基本給の1.5か月分を基準とし、営業利益の水準に応じて0.5か月分の範囲で増減させる」といった、下限を保証しつつ上振れ・下振れの幅を持たせる設計が運用しやすいという実務上の傾向があります。原資をまったく固定しない完全な業績連動型は、業績が悪化した年に賞与がゼロに近くなるリスクがあり、社員の生活設計への影響が大きくなりすぎる点に注意が必要です。

手順②:個人配分のルールを設計する

会社全体の原資が決まったら、次に個人ごとの配分ルールを設計します。基本の考え方は、「基本給 × 支給月数 × 評価係数」という算定式です。

評価係数は、評価ランクごとにあらかじめ倍率を決めておきます。たとえば5段階評価であれば、最上位ランクを1.3倍、標準ランクを1.0倍、最下位ランクを0.7倍というように差をつけます。この係数の幅が狭すぎると、評価を頑張っても賞与にほとんど差が出ず、評価制度そのものへの関心が薄れます。逆に幅を広げすぎると、評価者の主観による差が賞与額に強く反映されすぎ、評価の精度に対する不満が出やすくなります。

賞与の算定期間と人事評価の実施時期がずれている会社もよく見かけます。評価は年1回、賞与は年2回(夏季・冬季)という会社では、夏季賞与にどの評価結果を反映させるかを事前に決めておかないと、評価担当者ごとに解釈が割れます。前回の評価結果を次の算定期間の賞与に反映する、という時間差のルールをあらかじめ明文化しておくことが欠かせません。

手順③:社員への説明とシミュレーション

配分ルールができたら、実際の支給額に落とし込む前に、既存社員のデータでシミュレーションを行います。全社員の評価ランクを仮に当てはめ、算定式に沿って賞与額を試算し、極端に高すぎる・低すぎる結果が出ていないかを確認する工程です。

このシミュレーションを飛ばすと、制度を運用し始めてから「思っていたより差が大きすぎた」「ほとんど差がつかなかった」という想定外の結果に直面します。試算段階で係数を微調整できる余地を残しておくことが、初年度の運用を安定させるポイントです。

社員への説明では、「なぜこの金額になったか」を、評価ランクと算定式に沿って個別に説明できる状態を作っておくことが重要です。賞与の算定根拠を社員に開示せず、金額だけを伝える運用を続けると、評価制度そのものの納得感が失われます。給与全体の決め方の考え方は給与の決め方|「なんとなく」から抜け出す4つの手順でも整理していますが、賞与についても同じく、決定理由を説明できる状態を目指す姿勢が土台になります。

よくある失敗

賞与を評価に連動させる際に、つまずきやすいポイントを3つ挙げます。

失敗①:原資を決めずに配分ルールだけ作る。 個人配分の算定式を精緻に作り込んでも、会社全体の原資の決め方が曖昧なままでは、毎回の支給額が場当たり的になります。

失敗②:評価と賞与の算定期間のずれを放置する。 どの評価結果をどの賞与に反映するかを決めておかないと、評価担当者や部署ごとに解釈が割れ、社員から見た公平性が崩れます。

失敗③:決算賞与と評価連動賞与を同じ財源で運用する。 業績が良かった年に決算賞与のつもりで多めに支給し、翌年業績が悪化すると評価が高い社員でも大きく減らさざるを得なくなる、という事態が起きます。2つの賞与の性質を最初に切り分けておくことが欠かせません。

まとめ

賞与を評価結果に連動させる仕組みは、決算賞与との切り分け、原資の決め方、個人配分の算定式、社員への説明という順序で組み立てます。すべてを一度に精緻化する必要はなく、まず自社の賞与が決算賞与なのか評価連動賞与なのかを整理するところから始めれば、次に決めるべき論点が見えてきます。

評価制度全体の設計から見直したい方は人事評価制度とは|中小企業のための完全ガイドを、給与全体の決め方は給与の決め方|「なんとなく」から抜け出す4つの手順をあわせてご覧ください。