基礎知識
等級・評価・給与、それぞれ何のためにあるか
人事評価の本を読むと、等級制度・評価制度・賃金制度の3つが必ず出てくる。最初に学ぶ人にとっては「全部だいたい同じことを言っているのでは?」と感じる場面も多い。
実際は、3つはまったく違う役割を持っている。料理にたとえると分かりやすい。
等級制度は「メニュー表」
等級制度は、レストランのメニュー表のようなものだ。「うちの店にはAコース・Bコース・Cコースがあって、Aは2,000円、Bは3,500円、Cは5,000円ですよ」と、最初に客に見せるもの。
会社で言えば、「うちには一般職・主任職・課長職があって、それぞれ求められる役割と給与の幅はこうですよ」と全社員に見せるもの。社員が「自分は今どこにいて、次にどこを目指すか」を考えるための地図だ。
メニュー表のない店は、客に何を勧めればいいか店員も分からない。等級のない会社は、社員に何を求めればいいか社長も曖昧になる。
評価制度は「品質チェック」
評価制度は、料理の品質チェックに当たる。「Aコースの基準は満たしているか」「Bコースに上げる味になっているか」を、毎期チェックする仕組み。
ここで大事なのは、評価制度はメニュー表(等級)があって初めて意味を持つということ。メニューがないのに「この料理は何点」と採点しても、何の基準で測っているのか分からない。
評価制度だけ先に作ろうとする会社が多いが、たいてい途中で「で、これって何のために点数を付けているんだっけ?」と止まる。等級が先、評価はあと。
給与は「価格表」
給与は、メニュー表に紐づく価格表に当たる。「Aコースのお客様は2,000円、Bコースは3,500円」と決まっているように、等級と評価の結果で給与の動きが決まる。
順番でいうと、等級が決まる → 評価で確認する → 給与が動く。これが筋だと考えている。
逆に「給与の話から制度設計を始める」とこんがらがりやすい。社員のいまの給与をどう正当化するか、という後付けの作業になりやすい。理屈ではなく、辻褄合わせの制度になる。
なお、評価結果を給与に反映する場合でも、既存の給与を下げる方向の設計は別問題として慎重に扱う。制度上の理屈と、労働条件変更の手続きは分けて考えるのが基本だ。
3つの違いが分かれば、評価制度づくりで何に時間をかけるべきかも見えてくる。等級設計に7割、評価設計に2割、給与の連動に1割——これが当社の体感の比率だ。
評価シートだけ作って詰まる会社は、メニュー表を作らずに採点表だけ作っているようなもの。順番が逆だと、何回作り直しても運用に乗りにくい。