中小企業の賃金相場|部長62.7万・課長51.2万円の調べ方

賃金・賞与

中小企業の賃金相場|部長62.7万・課長51.2万円の調べ方

「うちの課長の給料、世間と比べて高いのか低いのか」——中小企業の経営者からよく聞かれる質問です。求人サイトの「平均年収◯◯万円」を見て一喜一憂する方も多いのですが、実はあの数字、実際に支払われた給与の統計ではありません。

求人サイトの「相場」と、公的統計の「相場」は別物

求人サイトの平均年収は、基本的に募集要項に書かれた希望額の集計です。応募を集めるために高めに設定されたり、賞与や残業代の見込みが含まれていたり、業種・職種の絞り込みが粗かったりと、実態とズレる要因がいくつも重なります。

一方、厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」は、事業所への調査票をもとに実際に支払われた給与額を集計した統計です。役職別・企業規模別・都道府県別・産業別に細かく分解できるため、自社の給与水準を測る「ものさし」として使えます。無料ですし、誰でもe-Statで確認できます。

私たちは人事評価制度の無料配布サービスのために、このe-Statの一次データから47都道府県×16業種の係数データベースを自前で構築しました。実際に手を動かして分かったことも含めて、調べ方を共有します。

その前に:「役職で決まる仕事」か「職種で決まる仕事」かを分ける

賃金相場を調べるとき、最初に押さえたいのがこの切り分けです。

  • 役職で給与が決まる仕事(総務・営業・企画などの総合職で、一般→係長→課長と上がっていく型):この記事で紹介する「役職別の相場×規模・地域・業種の係数」で概算できます。
  • 職種で給与が決まる仕事(歯科衛生士・看護師・介護福祉士・トラック運転者・美容師・保育士などの専門職・技能職):役職の階層ではなく、その職種そのものの相場で見ます。賃金構造基本統計調査には職種別の集計があり、たとえば歯科衛生士は年収約405万円、大型トラック運転者は約490万円といった実額が分かります。

専門職・技能職に「役職別の相場×業種係数」を当てはめると、業種係数(医療・介護・飲食などは1未満)が重なって実態より低く出てしまいます。職種で決まる仕事は、役職別ではなく職種別の実額で調べる——これが最初の分かれ道です。以下は主に「役職で決まる仕事」の調べ方として読んでください。

役職別の全国相場(所定内給与月額)

賃金構造基本統計調査 令和6年(2024年)の実数です。所定内給与額とは、基本給と諸手当の合計で、賞与や残業代は含みません

役職月額非役職比
部長級62.7万円約2.07倍
課長級51.2万円約1.69倍
係長級38.6万円約1.27倍
非役職(一般)30.3万円1.00倍

これはあくまで全国・全規模・全業種の平均です。自社の実態に近づけるには、ここから企業規模・地域・業種で補正する必要があります。

規模・地域・業種でどれくらい変わるか

① 企業規模による違い

同じ「課長」でも、会社の規模によって水準は変わります。全国全産業平均(33.04万円)を1.00としたときの係数です。

企業規模係数実額(所定内給与月額)
10〜99人0.9129.93万円
100〜999人0.9832.31万円
1,000人以上1.1036.45万円

中小企業(10〜99人)と大企業(1,000人以上)では、同じ全国平均比でも2割前後の差が出ます。

② 地域による違い(都道府県の上位・下位)

47都道府県の係数のうち、上位・下位を抜粋します(全国平均を1.00とした場合)。

上位

都道府県係数
東京都1.22
神奈川県1.08
大阪府1.05
愛知県1.01
埼玉県0.98

下位

都道府県係数
青森県0.79
宮崎県0.79
秋田県0.80
岩手県0.81
鳥取県0.81
沖縄県0.81

東京都が突出して高く、47都道府県の係数レンジは0.79〜1.22。地方に行くほど下がる、という単純な話ではなく、県ごとの産業構成によっても差が出ます。

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③ 業種による違い(16区分)

産業大分類ごとの係数です(同規模内での産業間比較)。

業種係数
金融業,保険業1.49
情報通信業1.17
学術研究,専門・技術サービス業1.16
不動産業,物品賃貸業1.15
電気・ガス・熱供給・水道業1.13
建設業1.12
鉱業,採石業,砂利採取業1.03
卸売業,小売業1.03
教育,学習支援業0.97
運輸業,郵便業0.96
サービス業(他に分類されないもの)0.96
複合サービス事業0.95
医療,福祉0.94
製造業0.92
生活関連サービス業,娯楽業0.92
宿泊業,飲食サービス業0.85

最上位(1.49)と最下位(0.85)では1.75倍の開きがあり、業種は規模や地域と同じくらい影響が大きい要素です。

自社の相場を概算する式

ここまでの係数を掛け合わせると、自社に近い水準を概算できます。

世間水準(概算) = 全国役職別実額 × 規模係数 × 地域係数 × 業種係数

計算例:千葉県・従業員30名・製造業の「課長級」の場合

  • 全国役職別実額(課長級):51.2万円
  • 規模係数(10〜99人):0.91
  • 地域係数(千葉県):0.97
  • 業種係数(製造業):0.92

51.2万円 × 0.91 × 0.97 × 0.92 = 約41.6万円(千円未満四捨五入)

全国平均の51.2万円をそのまま自社に当てはめると過大評価になりますが、規模・地域・業種で補正すると、より実態に近い水準が見えてきます。

ただし、この式が使えるのは冒頭で述べた役職で決まる仕事(総合職の一般〜課長など)に限ります。歯科衛生士・介護福祉士・トラック運転者といった職種で決まる専門職・技能職には、役職別×係数の逆算ではなく、賃金構造基本統計調査の職種別の実額を使ってください。業種係数を重ねると専門職を過小評価してしまうためです。

数字を読むときの注意点

正直に書いておきたい注意点が4つあります。

第一に、これはあくまで概算です。自社の実際の給与テーブルや個々の社員の経験・スキルまでは反映されません。最終的な判断は自社のデータと照らし合わせて行ってください。

第二に、賃金構造基本統計調査の集計対象は常用労働者10人以上の民営事業所です。5〜9人規模の会社はこの平均に含まれていない点は踏まえておく必要があります。

第三に、所定内給与は基本給と諸手当の合計であり、賞与や残業代は含みません。年収ベースで比較する場合は、この点を割り引いて考える必要があります。

第四に、業種によっては数値が跳ねる場合があります。たとえば金融業,保険業の係数は1.49と、他の業種より突出しています。これは調査対象の中に、少人数で高収益をあげる専門特化型の金融事業者が含まれ、平均を押し上げている可能性があるためです。一般的な事務職を抱える保険代理店のような業態にそのまま当てはめると、実態より高く出るおそれがあります。数字はあくまで目安として使い、極端な値が出た業種は特に慎重に読んでください。

まとめ

中小企業の賃金相場は、求人サイトの平均年収ではなく、賃金構造基本統計調査のような公的統計から調べるのが確実です。全国役職別の実額に、企業規模・地域・業種の係数を掛け合わせれば、自社に近い水準を概算できます。

私たちは、この47都道府県×16業種の係数をすべて収録した「中小企業の賃金相場データブック2026」(PDF)を無料で配布しています。自社の課長級・係長級がどのあたりの水準にあるか、手元で確認したい方はぜひご利用ください。

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