中小企業の等級数は何段階|30名は4段階・100名は5〜6段階

等級制度

中小企業の等級数は何段階|30名は4段階・100名は5〜6段階

「社員が増えてきたので、等級を増やしたほうがいいでしょうか」——社員30名前後の会社から特によく受ける相談です。人事評価制度の土台となる等級制度は、等級制度の作り方|中小企業向け完全ガイドで解説した通り、中小企業には3〜5段階が基本形です。ただし「3」なのか「5」なのかは、会社の人数によって答えが変わります。本記事では、この各論として、人数レンジ別に何段階が適正かを整理します。制度全体の位置づけは人事評価制度とは|中小企業のための完全ガイドも参考にしてください。

なぜ「何段階にすべきか」に人数の目安があるのか

等級制度は、社員を役割で階層化する仕組みです。階層をいくつ作るかは会社の自由に見えますが、実際には「1つの等級に何人が収まるか」が運用の成否を左右します。

1つの等級に社員が1人しかいなければ、その等級は事実上「その人専用のポジション」になり、他の社員から見て目指す意味を失います。逆に1つの等級に社員の大半が集まれば、等級同士の差が見えなくなり、昇格の実感が薄れます。等級数を決める作業は、実は「社員をどう配分するか」を先に考える作業でもあります。だからこそ、会社の人数が判断材料になります。人数を無視して「大企業のように5段階にしよう」と決めても、社員数が伴わなければ機能しません。

判断の基本ルール|「1等級あたり5〜8人」を目安にする

労務ニュースグループが顧問先の等級設計を支援する際に使っている目安が、1等級あたり5〜8人という基準です。式にすると、次のようになります。

等級数の目安 = 社員数 ÷ 6人(5〜8人の中央値)

例えば社員30名の会社なら、30 ÷ 6 = 5段階が目安です。社員15名なら2〜3段階が目安になります。一方、社員80名だからといって単純に13段階にはしません。人数が増えるほど段階数を無限に増やすのではなく、上限はおおむね5〜6段階に留め、それ以上の人数増加は「1等級内の人数を増やす」形で吸収するのが、中小企業の運用に向いています。段階を増やすほど、等級ごとの役割定義・賃金レンジの管理コストも比例して増える点も忘れてはいけません。

人数レンジ別の等級数の目安

社員数のレンジ別に、目安となる等級数と典型的な組織の形を整理すると、次の表のようになります。

社員数目安の等級数典型的な組織の形
10〜30名3段階社長や1人の管理者が全体を見る。役職は「一般・リーダー・管理職」の3層に収まることが多い
30〜50名4段階チームリーダー層が生まれる。新人・実務・指導・管理の4層
50〜100名4〜5段階部門・課単位の管理職が生まれる。部門長を加えて5層になることもある
100〜200名5〜6段階課長・部長など複数階層の管理職が必要になる。中小企業の場合でも上限は5〜6段階に留めるのが実務的

あくまで目安であり、業種や組織のフラットさによって前後します。店舗展開型で現場に管理職が多い業態(多店舗の飲食業・小売業等)は、各店舗に店長・副店長を置く分だけ等級数がやや多くなりやすく、逆に専門職中心でフラットな組織(少人数の士業事務所等)はレンジより少ない段階で運用できることもあります。自社の組織図を見て、実際に何層の指揮系統があるかを数えることが、目安を当てはめる前の出発点になります。

また、この表はあくまで「今の人数」に対する目安です。1年後に倍の人数になる見込みがあるからといって、今の時点で将来の等級を先取りして作る必要はありません。等級は実際に人数が増えてから、あるいは増員が確実になった段階で見直せば十分です。先取りして段階を増やすと、次の見出しで触れる「等級が多すぎる場合」の問題をあらかじめ作り込んでしまうことになります。

等級数が合っていないときに起きる問題

等級が多すぎる場合

大企業の制度をそのまま持ち込み、10段階以上の等級を作ってしまうケースがあります。中小企業がよくやる「大企業マネ」3つの失敗で紹介した通り、社員4人で6等級を運用していた会社では、誰も自分の等級を正確に把握しておらず、社長自身も「彼は……今、確か5等級だったか」と曖昧な認識でした。等級が多すぎると、無人の等級や1人しかいない等級が生まれ、制度そのものが形骸化します。将来の増員を見越して先回りで段階を用意したくなる気持ちは理解できますが、今いる人数に対して等級を先に増やすのは避けるべきです。

等級が少なすぎる場合

逆に、社員が50名を超えても3段階のままにしていると、実務を一人でこなせる社員も、チームを率いる社員も、同じ等級に押し込まれてしまいます。役割の違いが等級にも給与にも反映されないため、「頑張っても評価が変わらない」という不満につながりやすくなります。人数と役割の広がりに合わせて、等級も段階的に増やす判断が必要です。

等級数を見直すタイミング

等級数は一度決めたら固定するものではありません。次のような変化が起きたタイミングで、見直しを検討します。

  • 特定の等級に社員の半数以上が集中してきた
  • 新しく管理職ポジション(課長・部門長等)が生まれた
  • 新規事業・新拠点の立ち上げで、これまでになかった役割が発生した
  • 中途採用が増え、既存の等級では経験・スキルの差を説明しきれなくなった

賃金テーブルも等級と連動して見直す必要があるため、賃金テーブルの見直しサイクルの目安(3年に1回程度)にあわせて、等級数も点検すると運用がぶれません。等級だけを先に増減させて賃金レンジが追いつかない状態は、社員から見て一番不満の残る展開です。

よくある失敗

  • 失敗①:増員に気づかず等級を据え置く——人数が倍になっても、制度を作った当初の等級表のまま放置し、実態と合わなくなる
  • 失敗②:将来を見越して先に段階を増やしすぎる——「いずれ100名になるから」と、30名の段階で6段階を用意し、大半の等級が無人のまま何年も残る
  • 失敗③:特定の社員を昇格させたいがための思いつき等級追加——役割の言語化がないまま、その場しのぎで等級を追加してしまう。次に昇格を希望する社員にも同じ対応を迫られ、収拾がつかなくなる

まとめ

中小企業の等級数は、「1等級あたり5〜8人」を目安に、人数レンジに応じて3〜6段階の範囲で設計するのが実務的です。多すぎても少なすぎても社員の納得感を損なうため、増員や組織変化のタイミングで定期的に見直します。

具体的な等級表のひな形は人事評価シートのテンプレート・サンプル集も参考にしてください。等級そのものの設計手順は等級制度の作り方|中小企業向け完全ガイドで詳しく解説しています。