中小企業がよくやる「大企業マネ」3つの失敗

失敗例

中小企業がよくやる「大企業マネ」3つの失敗

中小企業の経営者が人事評価制度に興味を持つきっかけは、本かセミナーが多い。そして、書店に並んでいる人事評価の本の多くは、大企業を前提に書かれている。

そのまま中小企業に持ち込もうとして、半年後に制度ごと崩壊している——というケースを、労務ニュースグループでも何度か見てきた。典型的な失敗は3つある。

1.等級を10段階以上に分ける

大企業の制度は、たいてい等級が8〜12段階ある。新卒から役員まで、何十年もかけて昇格していくモデルだからだ。

これを30人規模の会社に持ち込むと、等級の半分が無人になる。極端な例だが、社員4人で6つの等級を運用している会社の事例もあった。誰も自分の等級が何なのか把握しておらず、社長すら「彼は……今、確か5等級?」と曖昧になっていた。

中小企業は3〜5段階で十分。社員数を等級数で割って、1等級あたり5人以上になる粒度を目安にすると、運用が回る。

2.360度評価を給与に直結させる

「複数の視点で評価する方が公平」という理屈で、360度評価(上司・同僚・部下からの多面評価)を入れる会社がある。育成目的・管理職フィードバック目的なら中小企業でも運用できるが、給与や昇格判定に直結させた形で安定運用できた中小企業は、当社が知る範囲ではかなり少ない。

理由は2つ。①顔ぶれが見えすぎている——誰が誰を評価したか、ほぼ全員に推測がつく。気を遣って本音を書けない。②評価する側の負担——全員相互で360度評価をやると、10人の会社でも1人が最大9人分の評価コメントを書くことになる。半年に1回でも、運用が回らない。

中小企業の評価制度本体は、上司評価と自己評価の2本立てで十分。複数視点は、月1の1on1で日常的に拾う方が現実的だ。

3.評価項目を20〜30個並べる

大企業の評価シートを見ると、評価項目が30個並んでいることがある。業績・行動・スキル・コンピテンシー、と細かく刻んでいる。

これも中小企業がマネると詰まる。評価する管理職が、項目を覚えきれないからだ。シートを開きながら「えーっと、この『自己研鑽』ってどう判断するんだっけ」と毎回考え込むことになり、結局すべて中央値(3点とか)が並ぶ評価シートができあがる。

中小企業の評価項目は、等級ごとに5〜8個。これくらいなら、管理職が日常で頭に入れて部下を見ていられる。


大企業の制度は、社員数千人を前提に設計されているから、緻密で複雑だ。それを真似て複雑な制度を作っても、運用する人手と時間が限られる中小企業では、どこかで崩れやすい。

中小企業では、運用のシンプルさは制度の精緻さより優先される。シンプルな制度を全員が理解して回している会社の方が、複雑な制度を誰も理解せず放置している会社より、結果として強くなる。