制度のつくり方
人事評価制度づくり、最初の3ステップ
「評価制度を作りたい」と相談に来られる経営者のかなりの割合が、最初に評価シートのテンプレートを探している。ネットで検索して、何かそれっぽいフォーマットを見つけて持ってこられる。
申し訳ないが、その順番だと制度は機能しない。
当社が評価制度づくりを支援するとき、シートに着手するのは最後だ。先に決めることが3つある。
等級を3つ〜5つに分ける
最初にやるのは、社員を3〜5段階の階層に分けることだ。新人・一人前・指導役・管理者、くらいの粒度で十分。中小企業で10段階の等級を作ると、運用が回らない。
等級は「役職」と一致させてもいい(一般→主任→係長→課長)し、役割で分けてもいい(自走できる/後輩を指導できる/部門を見られる)。どちらでもよいが、「いま誰がどの等級か」が即答できる状態にする。
これだけで、評価の前提が揃う。「○○さんは指導役の等級なのに、新人並みの動きだよね」みたいに、評価の基準点が会話に出てくるようになる。
等級ごとに「給与の上限と下限」を決める
次に、等級ごとに月給のレンジを決める。一般等級は20〜26万、主任等級は25〜32万、課長等級は32〜45万、といった具合。
幅を持たせるのは、同じ等級の中でも経験や成果で差をつけるためだ。レンジを決めずに評価制度だけ作ると、評価結果と給与が連動しないという最悪のパターンになる。
レンジを決めた段階で、いま在籍している社員を当てはめてみる。だいたい数人は「等級の上限を超えている」「レンジから外れている」状態になる。そこで初めて、過去の昇給判断の癖が可視化される。
ただし、レンジから外れた社員がいたからといって、すぐ給与を下げる話にはしない。賃金の不利益変更は、現給保障・移行期間・個別合意・賃金規程の整備までセットで設計する必要があり、評価制度の話とは別物として扱うのが基本だ。
「等級を上げる条件」を1〜2行で書く
最後に決めるのが、各等級の昇格条件だ。これが評価制度の本丸といっていい。
「主任に上がるには、後輩2人を半年間で育てた実績がある」「課長に上がるには、3,000万円規模の案件を独立で回せる」みたいに、具体的な条件を1〜2行で書く。
評価シートは、この昇格条件を測るための道具にすぎない。条件が決まれば、シートは自然に決まる。逆に、昇格条件が曖昧なまま作ったシートは、何を測っているのか自分でも分からなくなる。
3つできた段階で、ようやく評価シートを作る価値が出てくる。最初の3ステップを飛ばしてシートから入ると、立派なシートはできても運用されない、という典型的なパターンに陥る。
順番を変えるだけで、評価シートを作る前提はかなり整う。