AI・診断
AI診断+専門家、なぜ両方が必要なのか
人事評価.comの仕組みは、7問のAI診断と、その後の30分の専門家相談、という2段構えで動いている。「AIだけで完結させればよくない?」「いや、人が全部やるべきでは?」と、両方向から聞かれる。
実際にAI診断システムを作って運用してみると、AIに任せやすい領域と、人(グループ社労士法人の監修担当)が見るべき領域は、はっきり分かれていた。
AIに任せやすいこと
AIは、膨大なパターンを瞬時に当てはめて、初期仮説を一定の型で出す作業に強い。
7問の診断は、回答パターンが理論上4の7乗 = 16,384通りある。これを匿名化した過去の事例データや、社内で整理した制度パターンと照合して、「いまの貴社の課題はどの典型パターンに近いか」を提示する——という作業は、AIに任せた方が早く、初期仮説の精度も安定する。人が同じことをやろうとすると、初対面の30分ではどうしても主観が入る。
もう1つAIが得意なのは、定型作業の効率化。賃金テーブルの計算、過去事例から類似業種のパターンを引いてくる、評価項目の候補を100個並べる、といった作業はAIに任せた方が圧倒的に早い。
ここを効率化できているから、人事評価ドットコムは制度の「標準形」を無料で配り、運用支援で価値を出す、という形を取れている。
人が見るべきこと
一方、AIだけでは判断が難しい領域もある。例外的な事情の読み取りだ。
例えば、ある建設会社で評価制度を作ったとき、社長から「うちは現場のベテラン職人を、現場では神様扱いするが、評価制度上は普通の社員として扱いたい」と言われた事例があった。一見矛盾しているが、聞いてみると深い意図があった——若手に「ベテランの地位は職人技で勝ち取るもので、給与制度の上下ではない」と伝えたい、という考えだった。
こういう、会社固有の文化的事情を制度に翻訳する作業は、いまのAIには難しい。30分話す中で「あ、この社長はここに矛盾を感じている」と察知して、設計に反映する——これは人の方が確実だ。
それと、意思決定の伴走。評価制度を入れると、いまの給与レンジから外れる社員が見つかることがある。ただし、実際に賃金を下げるかどうかは別問題で、現給保障・移行期間・個別合意・賃金規程の変更まで含めて慎重に扱う必要がある。誰に、いつ、どう説明するか——という重い判断は、AIに自動実行させるわけにはいかない。専門家が「過去の事例だと、こういう順番でやると衝突が少ないです」と伴走する価値がここにある。
組み合わせると何が変わるか
両方を組み合わせた結果、当社の仕組みではこんな分担になっている。
最初の60秒は、AIが貴社の現在地を可視化する。その後の30分は、グループ社労士法人の監修担当を中心に「貴社固有の事情をどう設計に織り込むか」を一緒に整理する。実装の段になると、AIが過去事例から下書きを生成し、残りを人がチューニングする。
AIだけでは深さが出にくく、人だけでは速さが出にくい。両方を組み合わせて、初めて「フル設計の費用感より大幅に抑えた価格で、運用に乗る制度を早く作る」が成立する。
「全部AIで完結します」「人が全部やります」と言い切るサービスは、たいていどちらかが手薄になる。両方の得意領域を冷静に分けて使う、というのが、人事評価ドットコムが今の段階で取っている現実的な答えだ。